癒着胎盤スペクトラムの見取り図 ― 第3回:MRIは超音波に何を加えるか

癒着胎盤スペクトラム(PAS)が疑われ、超音波と磁気共鳴画像(MRI)の両方を受けた米国2施設の78例では、MRIが超音波の診断を変えたのは28例、そのうち13例は誤りでした(Einerson 2018)。2025年の二つの総説は、この同じ報告を引用しながら、結論が分かれています。第3回は、超音波にMRIを併用すると何が変わるかを整理します。
Obstetric Strategist 2026.10.08
誰でも

本連載は産婦人科専門医が執筆しています。頻出する略語は記事末尾の付録にまとめ、本文では初出時に展開します。

結論(忙しい先生へ)

  • PASが疑われ超音波とMRIを受けた米国2施設の78例では、MRIが臨床管理を変えうる診断の変更をもたらしたのは28例(36%)で、その半分近くが誤りでした。 手術所見または病理診断と照らすと、正しかったのが15例、誤っていたのが13例です。誤りは重い側に偏り、13例中10例は重症PAS(穿通胎盤)への引き上げでした。一方で、超音波が捉えなかった膀胱への浸潤をMRIだけが疑った症例が1例あり、この判断は正しく、実際に胎盤は膀胱に強く癒着していました(Einerson 2018。引き上げの内訳は同じ著者らの回答=Einerson 2018b)。

  • PASがあるかどうかを見つける精度は、超音波とMRIで同程度でした。 同じ妊婦に両方の検査を行った17研究・計1,301例のメタ解析で、超音波は感度83.3%・特異度83.4%、MRIは感度83.8%・特異度83.1%、統計学的に有意な差はありません。いずれの研究も、PASのリスク因子があって専門施設へ紹介された妊婦を集めたものです(De Oliveira Carniello 2022)。

  • 重症PAS 26例では、MRIと超音波の検出に統計学的な有意差は示されませんでした。MRIが重症と読まなかったことは、否定の根拠になりません。 手術所見または病理診断で重症PAS(穿通胎盤)と確認された26例のうち、正しく判定できていたのはMRIで17例(65%)、超音波で11例(42%)で、著者らはこの二つを同程度としています(P=.1)。26例という規模では有意差が出なかった、という意味であって、両者が等しいと示されたわけではありません(Einerson 2018)。

  • 後壁胎盤でMRIが役に立つかについては、結論が一致していません。 Einersonらの78例では、後壁または側方の24例で診断が変わったのは8例(33%)、前壁または中央の54例では20例(37%)で、変わる頻度に差は見出されませんでした(P=.84)。著者らは、後壁・側方の付着において診断精度が改善する証拠は見出されなかったとしています(Einerson 2018)。一方、2025年の総説で Wallerらは、超音波がPAS診断の標準であることは変わらないとしたうえで、後壁付着の評価にMRIはとくに有用であるとしています(Waller 2025)。

  • MRIが深達度を判定できるか、そして浸潤の局在を描出できるかは、また別の問いです。 深達度とは単純癒着胎盤・侵入胎盤・穿通胎盤のどれか、局在とは子宮体部(S1)か子宮下節から下(S2)かです。MRIだけを扱ったメタ解析で、Familiariらは、MRIは手術で確認されたS1・S2いずれの浸潤も100%正しく同定していたことを挙げ、さらなる証拠が出るまでは、重症のPASが疑われる妊婦に局在を描出するためMRIを行うのは、とくに子宮摘出のような切除を伴う手技を予定しているときは妥当かもしれない、としています。ただしこのS1・S2という分け方は前壁の浸潤を主な対象にした分類で、局在を調べた研究は3本、症例数が少なく特異度のデータも無いことを、著者ら自身が断っています。深達度のほうは、単純癒着胎盤と侵入胎盤をまとめた区分で感度95.0%、穿通胎盤で86.5%です。これは、病理で確定した深達度それぞれを分母に、MRIの総合判定が「異常あり」だったかどうかを見た値で、主に超音波でPASが疑われ、二次的にMRIを受けた妊婦での成績です。単純癒着胎盤だけを取り出すと感度94.4%・信頼区間15.8〜99.9で、この幅からは読み取れるものがありません(Familiari 2018)。

  • 穿通胎盤かどうかを、MRIの所見ひとつで確定することはできません。逆に「認められないこと」は、所見によっては手がかりになります。 胎盤内T2低信号帯は感度82.6%・特異度58.5%で、認めても穿通胎盤を強く裏づけませんが、陰性尤度比は0.30で、認められないときのほうが穿通胎盤は考えにくくなります。隣接臓器への直接浸潤・限局性の外方突出腫瘤は陽性尤度比64.3ですが、信頼区間が1.01〜4080と広く、この値だけでは判断できません。原典は、このうち外方突出腫瘤を胎盤組織が漿膜を破って外へ及んでいるのが認められることと定義しています。この二つをまとめた項目としての陰性尤度比は0.31です(いずれも Familiari 2018。穿通胎盤を判定するときの値です)。

  • この78例の報告をめぐって、評価は分かれています。 著者ら自身は、より決定的な前向き研究で有用性が示されるまでは、PASの診断において超音波の補助としてMRIをルーチンに用いるべきではないとしています(Einerson 2018)。Matsubaraらは、この報告への書簡で、超音波とMRIのどちらであれ重いほうの判定に合わせて備えるべきで、決定的な証拠が示されるまでは、最悪の事態を避ける、あるいは和らげるためにMRIを行うことを勧めるとしています(Matsubara 2018)。2025年の二つの総説も分かれます。Jauniauxらは、MRIは出生前スクリーニングに役割をもたず、臨床所見と超音波所見から出生時にPASである可能性が高いと分かっている妊婦への補助としても、各国と国際のガイドラインは推奨していないとしています(挙げられている3つに日本のガイドラインは含まれていません。またこの「推奨していない」に根拠として引用されているのはガイドライン文書のほうであって、Einersonらの報告ではありません。Jauniaux 2025)。Wallerらは、MRIがPASの診断精度を超音波より高めることは示されていないが、超音波と併用すれば診断精度を高めるのに有用でありうるとしています(前者はMRIと超音波の比較、後者は「超音波+MRI」と超音波単独の比較です。Waller 2025)。いずれも原典の主張で、本稿としてどれかを推すものではありません。

本稿が扱うのは、MRIでPASと重症PASを見つけられるか、超音波のあとに重ねると何が変わるか、そして浸潤の深達度を判定し、局在を描出できるかです。MRIの所見から母体の周産期転帰を予測できるかは別の問いで、次回に扱います。

二つの総説は、同じ報告を違う扱いで引用している

MRIの位置づけは、2025年時点でも一致していません。まず、研究によって問うていることが違います。癒着胎盤を検出できるかを問うと、超音波との有意差は示されていません。MRIの所見から母体の周産期転帰を予測できるかは別の問いで、扱う研究群も違います。そのうえで、検出という同じ問いについても、同じ報告のどこを引用するかが総説によって違います。2025年の二つの総説は、どちらもEinersonらの同じ報告を挙げています。

Jauniauxらがこの報告を引用しているのは、二つの文です。ひとつは、熟練した術者が行えば、PASの検出について超音波とMRIの感度・特異度は同程度である。もうひとつは、MRIはPASの臨床管理を変えうる診断の変更を3分の1を超える症例でもたらすが、変わったときその診断はしばしば誤っている(いずれも Jauniaux 2025)。

そのうえで著者らは、MRIは出生前スクリーニングに役割をもたず、臨床所見と超音波所見から出生時にPASである可能性が高いと分かっている妊婦への補助としても、各国と国際のガイドラインは推奨していないと書いています。ただし、この「推奨していない」に根拠として引用されているのはガイドライン文書のほうであって、Einersonらの報告ではありません。そこで挙げられているのは国際産科婦人科連合の合意ガイドライン、英国王立産科婦人科医会のガイドライン、そして米国で出された Obstetric Care Consensus(第7号)の3つで、日本のガイドラインは含まれていません(Jauniaux 2025)。

著者らが理由として挙げているのは二つで、MRIの機器と、PASに伴う変化を読むための専門性が、どこでも使えるわけではないこと、カラードプラと違い、標準的なMRIでは癒着胎盤に伴う血管の変化の分布を描出できないことです。この二つ目には、同じ節の前段が対応しています。著者らは、子宮輪郭と子宮胎盤境界の異常——clear zone の消失、筋層の菲薄化、膨隆——は、PASの出生前診断に必須の所見として広く報告されているが、これらは前壁下節の瘢痕化とリモデリングに二次的なもので、PASの臨床病理学的な診断に特異的ではないとし、特異的なのはむしろ子宮胎盤と胎盤内の循環の変化のほうで、複数回の帝王切開既往と下節への胎盤付着が重なるときはとくにそうだと書いています。そして、熟練した術者が行えば、前置癒着胎盤の出生前評価における超音波の統合成績は感度88〜97%・特異度90〜97%の範囲にある、としています(いずれも Jauniaux 2025)。

他方のWallerらは、MRIが有用でありうる条件を挙げています。そのうえで、Einersonらの報告を、読影レポートの解釈には注意が要るという注意書きの根拠として引用しています。注意が要る理由として挙げているのは、MRIのレポートが誤った診断の変更につながりかねないという懸念です。同じ総説には、MRIの位置づけを述べた文が二つあります。ひとつは超音波との関係についてで、MRIはPASの評価において超音波に対する二次的な補助である。もうひとつは補助のなかでの選ばれ方についてで、現時点で、MRIはPASにおける補助的画像診断法として選ばれるものであり続けている。どちらも、この総説がMRIを主題にした節の外に置いた文です(いずれも Waller 2025)。

この「ガイドラインは補助としても推奨していない」という記述と、日本の産科ガイドライン2026 CQ307 との照合は、次回に扱います。

Einersonらが測ったもの ― 78例はどう分かれたか

Einersonらは、米国で癒着胎盤の紹介を多く受ける2施設(ユタ大学とコロラド大学)で、超音波所見または臨床的なリスク因子からPASが疑われ、第2・第3三半期に超音波とMRIの両方を受けた78例を、後ろ向きに検討しました。研究施設の外で分娩した例は除かれています。正誤の基準は、分娩時の手術所見または病理診断です。この基準自体について、Jauniauxらは、従来の病理プロトコルは主観的で確認バイアスを受けやすく、術者は画像に報告されたことを「確認」しがちで、病理医も術者が報告した内容に応じて診断を上げ下げしうると書いています(Jauniaux 2025)。重症PAS(穿通胎盤)については、筋層全層を貫いて漿膜に達する浸潤を病理が示すか、分娩時に子宮を越えた浸潤が臨床的に確認されたかのいずれかで確定しています。子宮摘出をしなかった症例では、胎盤が自然に娩出し、大量出血も追加処置もなければ「PASなし」と割り当てられています。手術を担当した術者は、超音波とMRIの結果を知ったうえで手術に臨んでいます(盲検化されていません)。どういう場合にMRIを撮るかを定めた手順書も、どちらの施設にも置かれていませんでした。著者らは、この手順書の不在が評価しにくいバイアスを持ち込んでいる可能性が高いと書いています(Einerson 2018)。

著者らは、超音波とMRIの読影を、どちらもPASを疑わない/PASを疑う(単純癒着胎盤と侵入胎盤にあたる)/重症PASを疑う(穿通胎盤にあたる)の3段階に分けています。割り当ては、読影の判定にもとづいて行われています。3つに分けたのは、それぞれ分娩時の管理が変わると考えられたからだと述べています(Einerson 2018)。

主要アウトカムは、「臨床管理を変えうる診断の変更」です。データ収集の前に定義されており、単に診断が変わったことではなく、次の4通りのどれかが起きたことを指します。①超音波で判断がつかなかった症例をMRIがPASと判定する。②PASの疑いを重症PAS(穿通胎盤)の疑いへ上げる。③超音波が捉えなかった子宮外の骨盤内臓器への浸潤を指摘する(重症PASにあたる所見です)。④診断を軽い側へ下げる。PASの疑いをPASなしへ、または重症PASの疑いをPASへ、のどちらかです。

前の3つは、超音波の診断を重い側(PASなし→PAS→重症PASの順)へ、最後の1つは軽い側へ変えるものです。いずれかが起きたのは78例中28例(36%)で、重い側が19例、軽い側が9例でした。この19例の内訳は、PASの疑いを重症PASの疑いへ上げたものが16例、判断がつかなかった症例をPASと判定したものが2例、骨盤内臓器への浸潤を指摘したものが1例です(Einerson 2018)。

骨盤内臓器への浸潤を指摘した1例では、MRIが膀胱への浸潤を疑い、超音波はそれを捉えていませんでした。開腹すると胎盤は膀胱に強く癒着しており、視野と安全を確保するために意図的に膀胱を切開して子宮腟上部切断術が行われています。推定出血量は1,000mLで、術後の有害事象はありませんでした(Einerson 2018)。

この4通りが「臨床管理を変えうる」とされたのは、この2施設で管理が実際に分かれていたからです。PASを疑わなければ、前置胎盤のない妊婦は経腟分娩の対象でした。PASを疑えば帝王切開時の子宮摘出を勧め、重症PASを疑えば追加の外科系専門医を手配するのが通例でした。予定帝王切開の週数も、無症候の妊婦では、PASを疑わない場合(前置胎盤があれば)は37週、PASの疑いで36週、重症PASの疑いで34週を目安に予定する傾向があった、と書かれています(Einerson 2018)。

この28例を最終診断と照らすと、変えた結果が正しかったのが15例、誤っていたのが13例です。残る50例では、MRIの読影が超音波の診断と一致しましたが、そのうち16例は、超音波もMRIも最終診断と食い違っていました(Einerson 2018)。

誤った13例を向きで分けると、重い側が10例、軽い側が3例です。重い側の10例は、すべて穿通胎盤への上げでした(Einerson 2018b・著者回答)。軽い側の3例は、重症PASの疑いをPASへ下げた1例と、PASの疑いをPASなしへ下げた2例です。後者の2例は実際にはPASがあった症例で、前置胎盤がなければ経腟分娩の対象になっていた群にあたります。上げの誤りと下げの誤りでは、そのあとの管理が反対側へ寄ります。重い側について著者らは、PASと違う扱いをすれば、追加の処置や医原性早産で不要な害を被りうると書いています(Einerson 2018b・著者回答)。

変えて誤った13例に、同じ診断のまま食い違っていた16例を合わせると、MRIの読影が最終診断と一致しなかったのは78例中29例になります。誤りの向きでみると、全78例に対して過剰診断が23%(18例)、過小診断が14%(11例)でした(Einerson 2018)。ここでいう過剰診断は、最終診断より重い側に読んだもの——PASなしをPASと読む、PASを重症PASと読む——で、過小診断は軽い側に読んだものです。この78例の分かれ方を図1に示します。図は、診断を変えた28例を、変えた先ではなく正しかったか誤っていたかで分けています。重症PASへの上げにあたるのは、図の正しかった7例と誤っていた10例で、本文で挙げた16例と、骨盤内臓器への浸潤を指摘した1例を合わせたものです。

図1 左はMRIの読影が超音波の診断と一致した50例、右はMRIが超音波の診断を変えた28例です。この図のもとにした原報の図1は、オンライン版にのみ掲載されています。本図は、原報の図1の最上段にある超音波の読影の欄を含んでいません(Einerson 2018 Figure 1)。その欄は2019年に誌上で訂正されており、経緯は「重症度で変わるか、そして誌上の訂正」の節に記しました。

後壁・側方の付着で変わるか

後壁・側方は、複数の著者がMRIの実施を勧めてきた部位です。2017年に再確認された米国産科婦人科学会(American College of Obstetricians and Gynecologists:ACOG)の委員会見解も、この部位に触れています。MRIは補助的な手段として考慮されるべきであり、超音波の診断精度をほとんど高めないとしたうえで、超音波で判断がつかない場合と後壁の癒着胎盤が疑われる場合には考慮しうる、としています(いずれも Einerson 2018 が引用)。

そのEinersonらの論文自身に、この部位の結果があります。後壁または側方の胎盤付着は24例あり、MRIが超音波診断を変えたのはそのうち8例(33%)でした。この8例のうち、MRIが誤っていたのが5例(誤って上げたのが4例、誤って下げたのが1例)、正しかったのが3例です。前壁または中央(後壁・側方以外)の付着は残る54例で、診断が変わったのは20例(37%)でした。診断が変わる頻度に差は見出されませんでした(P=.84)(Einerson 2018)。

この結果が示しているのは、後壁・側方24例と前壁・中央54例という規模で差が見出されなかったことであって、後壁でMRIが有用でないことが証明されたわけではありません。著者らも、サブグループの症例数が少なく、有意でなかったという結果は慎重に解釈されるべきだと述べています。同じ考察で著者らは、別の報告も引用しています。超音波とMRIを32例で比べたもので、そのうち41%が後壁または側方の付着でした。そちらでも両者の診断精度に差はなく、胎盤の位置がどちらの検査の診断能にも影響していなかった、としています(いずれも Einerson 2018)。

後壁胎盤でのMRI利用を支持する記述は、Wallerらの2025年の総説にもあります。Wallerらは、後壁胎盤にPASの臨床的リスク因子が加わる場合、骨盤内臓器への浸潤が懸念される場合、超音波で結論が出ない場合の3つを、MRIがとくに有用でありうる条件として挙げています。あわせて、体格指数(BMI)が高く超音波が技術的に難しい場合にも有用でありうる、としています。同じ節には、後壁胎盤に限定した別のメタ解析も引用されています(Waller 2025)。

この条件列挙の前段にある総論は、Einersonらの結論と重なる部分と、そうでない部分があります。前半はMRI単独と超音波の比較で、MRIがPASの診断精度を超音波より高めることは示されていない。MRIに積極的でない向きは Einersonらと同じですが、Einersonらが調べたのは超音波のあとにMRIを重ねる使い方で、比較の相手は同じではありません。後半は「超音波+MRI」と超音波単独の比較に移り、超音波と併用すれば診断精度を高めるのに有用でありうると続けています。同じ総説の導入では、MRIは超音波の診断精度を高めることが示されていると留保なしに書かれており、本節の総論はそれを「有用でありうる」と弱めた形です(いずれも Waller 2025)。

後壁について、二つの結論は一致していません。Einersonらは自施設の24例から、後壁・側方の付着において診断精度が改善する証拠は見出されなかったとしています。Wallerらは結論部で、超音波がPAS診断の標準であることは変わらないが、後壁付着・浸潤の広がり・超音波で結論が出ない所見の評価にはMRIがとくに有用であるとしています。この結論部は「有用でありうる」ではなく「とくに有用である」で、本文中の条件列挙より強い書き方です。根拠の置き方も違います。Einersonらが挙げるのは自施設の24例と、位置が精度に影響しなかったとする32例の報告で、Wallerらが引用するのは後壁胎盤に限定したメタ解析です。違う種類の根拠であることは、結論が一致しないという事実を消しません(Einerson 2018・Waller 2025)。

Wallerらは撮る時期にも触れています。PASを評価するためのMRIの最適な時期は妊娠28〜32週で、28週より前は胎盤の成熟が不十分で不正確な診断につながりうる、32週を過ぎると、正常な妊娠後期であることそのもののためにMRIが難しくなりうる、というものです(Waller 2025)。

重症度で変わるか、そして誌上の訂正

超音波で穿通胎盤が疑われた重症例では、MRIが診断を変えたのは14例中2例でした。2例とも、重症PASの疑いを下げる向きの変更です。1例は正しくPASへ下げたもので、もう1例は誤ってPASへ下げたもので、手術と病理で最終的に重症PASと確認されました(Einerson 2018)。

重症PASの判定精度は、分母をどちらに置くかで二通りに書けます。まず病理・手術の側に置く見方です。手術所見または病理で重症PASと確認された26例のうち、MRIが重症PASと正しく判定できていたのは17例(65%)、超音波は11例(42%)で、著者らはこの二つを同程度としています(P=.1。Einerson 2018)。

もう一方は、検査の側に分母を置く見方——陽性的中率です。MRIの読影が重症PASだったのは28例で、そのうち正しかったのが同じ17例、陽性的中率は61%(95%信頼区間41〜78)です。この28例は、診断を変えた28例とたまたま同じ数ですが、別の集団です(Einerson 2018)。超音波が重症PASと読んだ14例では11例が正しく、79%(49〜95)でした(Einerson 2019・著者回答=下記の訂正後の値)。この14例は、この節の冒頭に出た、超音波で穿通胎盤が疑われた14例と同じ集団です。

著者らは、この感度と的中率はきわめて慎重に解釈されるべきだとしています。理由は、どちらの検査もこの2施設で全例に行われていたわけではないことです。そこから二つのバイアスがどちらもありそうだ、と著者らは書いています。ひとつは、重症PASが疑われる症例ほどMRIが行われやすいという選択バイアス。もうひとつは、MRIが行われると知っている放射線科医が、超音波の段階で「重症」と呼ぶことをためらうという確認バイアスです(Einerson 2018)。

この79%は、誌上での訂正を経た値です。原報の本文では「11/15例・73%」でしたが、同じ論文には超音波で重症PASが疑われたのは14例とも書かれており、原報の図1の超音波の欄とも合っていませんでした。Rottenstreichらは、14例なのか15例なのかが決まらないことを誌上で指摘しています(Rottenstreich 2019)。著者らは全症例を見直し、超音波の読影の分類の記録に2例分の誤りを認めました。その2例分の付け替えが反映されたのが、原報の図1の最上段にある超音波の欄です。軽症PASは41、重症PASは14に訂正されました(「軽症PAS」は原報の図1の欄の名で、本文の3段階では中位の「PASを疑う」に当たります)。陽性的中率は11/14例・79%に改められています(Einerson 2019・著者回答)。

著者らはあわせて、この誤りが及んだのは超音波の読影の分類だけで、主要アウトカムの分類も、その他の結果も変わっていないこと、図1のそれ以外の数値と計算は症例を確認して正しいと確かめたことを記しています(いずれも Einerson 2019・著者回答)。本稿の図1はこの最上段を含んでいないため、訂正の対象を含みません。

最後に、数の残る食い違いをひとつ。MRIが重症PASと正しく判定した17例は、原報の図1から数え直すと16例になります。一致して正しかった重症PASの9例と、正しく重症PASへ上げた7例です。本文と図1のこの1例のずれは、原報に残ったままです(Einerson 2018 Figure 1)。本稿は本文の17を採っています。著者らは全症例を見直したうえで、2019年の回答でもMRIの陽性的中率を61%(41〜78)と原報どおりに再掲しており、この値は17を28で割ったものだからです(Einerson 2019・著者回答)。

著者の結論と、誌上の応酬

著者らの結論は、この2施設でMRIを超音波の補助として用いたことが、過剰診断・過小診断・誤解を招く診断の変更につながることが多かった、というものです。そのうえで、高い費用に対して臨床的価値が限られていることを理由に、PASの診断において超音波の補助としてMRIをルーチンに用いるべきではないとしています。費用の額は示されておらず、MRIの費用が、すでにルーチンで行われている超音波より高い、という比較です。ただしこれは、有用性の証拠が、より決定的な前向き研究で明らかに示されるまでは、という条件つきです(Einerson 2018)。

著者らは、MRIを高精度の診断検査と表現することは誤解を招きうる、とも書いています。MRIはPASの疑いが非常に濃い症例にほとんど常に行われるため、検査そのものの質にかかわらず、多くの研究で精度がよく見えてしまう、というのがその理由です。疑いが濃い集団では有病率が高く、事前確率も高いからです。そのうえで、別のメタ解析が報告した診断精度を、PASの事前確率が0.5の集団(ユタ大学の集団がそうでした)に当てはめる計算を示しています。MRIが陽性なら事後確率は0.86(95%信頼区間0.79〜0.90)で、残る14%が過剰診断にあたります。陰性なら0.07(0.02〜0.15)で、この7%が見落としにあたります(いずれも Einerson 2018)。

この結論には、同じデータを別に読む反論が誌上で出ています。自治医大のMatsubaraらは、図1で変えた結果が正しかった15例のうち重症PASへ上げた7例(全78例の9%)を挙げています。そのうえで、術前に穿通胎盤と診断された症例には、自施設では大動脈バルーン閉塞と尿管ステントを用いて帝王切開時の子宮摘出を行うと記し、術前に分かっているかどうかで備えが変わることを、MRIが実地で有用である論拠としました。この提案の射程は図の説明に書かれています。手術を計画するときは重いほうの診断を採り、軽いほうは考えないこと。最終的な治療方針は術中に決めるべきだ、というものです(Matsubara 2018)。最悪の事態は、体制も器具も整わないまま開腹してから想定外の穿通胎盤に出会うことであり、超音波とMRIのどちらであれ重いほうの判定に合わせて備えるべきだ、というのがその立場です。その論拠として、検査そのものに患者を害する危険があるなら話は別だが、MRIは費用こそかかるものの患者に害を与えない、と書いています。そのうえで、決定的な証拠が示されるまでは、最悪の事態を避ける、あるいは和らげるためにMRIを行うことを勧めるとしています(Matsubara 2018)。

著者らは回答で、同じ「重症PASへ上げた」の誤った側を示しています。変えた結果が誤っていた13例のうち10例が、穿通胎盤への誤った上げでした(全78例の13%)。これらの症例は、PASと違う扱いをすれば追加の処置や医原性早産によって不要な害を被りうる、と著者らは述べています。そうした症例では、MRIは有害でありうる、とも書いています。逆に、MRIの読影が超音波の診断と一致したなかで「過小診断」と数えられている8例のうち、6例は実際には穿通胎盤でした(全78例の8%)。分母の8例は原報の図1にある数で、この回答が示しているのは6例と8%です。この6例について著者らは、ここでもMRIは誤解を招くものであり、産科・外科のチームが最悪の事態への備えが手薄なときには、害につながりうると書いています(いずれも Einerson 2018b・著者回答)。

著者らはあわせて、自分たちの主張がどこまでを対象にしているかを述べています。MRIが無用だと言っているのではなく、質の高い超音波がすでに行われたあとにMRIが有用かどうかを問うている、というものです。著者らはこれにすぐ続けて、MRIを行う専門性や資源が十分でない状況は多く、この問いはそこでこそ意味を持つ、とも書いています。そのうえで、穿通胎盤に対する画像の予測能は限られ、偽陰性率が容認しがたいほど高いことは超音波もMRIも変わらない、としています(Einerson 2018b・著者回答)。

ただし、その「質の高い超音波」が何を指すかは、この回答には示されていません。原著の方法には、院外で撮られた超音波は研究施設の放射線科医が読み直し、不十分と判断された場合や時間が経っていた場合は研究施設で撮り直したこと、MRIは癒着胎盤の読影に習熟した放射線科医が読んだことが記されています(Einerson 2018)。

先に挙げた65%・42%を、読めなかった側から言い直すとこうなります。手術所見または病理で重症PASと確認された26例のうち、重症PASと判定できていなかったのはMRIで9例、超音波で15例でした(Einerson 2018)。この15は、訂正前の陽性的中率の分母だった15とは別の数です。

この予測能と偽陰性率を理由に、著者らは、穿通胎盤が疑われる症例に限らず、PASが疑われる全症例を、穿通胎盤かもしれないものとして、PASの管理経験がある施設で管理することを提案しています(Einerson 2018b・著者回答)。ただし、どの程度の経験を指すかは、この回答には示されていません。あわせて著者らは、自分たちのデータは決定的なものではなく、施設の状況や管理の方針によっては別の解釈がありうる、とも書いています。そのうえで、超音波の補助としてMRIを用いるとき、そこで得られうる益は、過剰診断・過小診断・誤解を招く診断の変更というリスクと秤にかけられるべきだ、と結んでいます(いずれも Einerson 2018b・著者回答)。

誌上にはもう一通、原著への書簡があります。Limらは、MRIが「誤解を招く」というこの研究の結論は、現時点のデータからは時期尚早であり、過大に述べられているかもしれないとしています。挙げている理由は二つです。ひとつは、この研究で癒着胎盤のためにMRIを受けた妊婦は年に4例ほどと見積もられ、これでは体制として、あるいは施設として、読影の十分な習熟に達しうるのかという疑問が生じること。もうひとつは、報告されたMRIの精度は低めで、撮像の妊娠週数についての既報と噛み合わないかもしれないことです。手術計画のための胎盤MRIを妊娠第3三半期の早い時期に行うことは当時の診療基準に含まれているとしたうえで、この研究はMRIを撮った妊娠週数を報告しておらず、第2・第3三半期とだけ書いているとLimらは指摘しています。24週より前に撮った胎盤MRIは、それより後に撮ったものほど正確ではないとする報告がある以上、週数の幅が広ければ報告された精度を押し下げえた、というのがその論拠です(Lim 2019)。Limらがここで引用しているのは、Wallerらが「PASを評価するためのMRIの最適な時期は28〜32週」とする根拠に挙げているのと同じ2015年の報告です。Limらはまた、この研究には拡散強調画像が含まれていないようだとも書いています。拡散強調画像は、胎盤と筋層の境界の見え方を改善することが示されており、当時すでに多くの施設で胎盤MRIの標準的な撮像内容に入っていた、というのがその前提です(Lim 2019)。

精度は時間で改善したか ― 著者らが挙げた限界

MRIの精度が時間とともに改善したかどうかも、著者らは確かめています。20年にわたる研究なので、読影の習熟が結果に影響した可能性を検討したものです。著者らはこれを、手順書の不在などのバイアスを相殺するための検証と位置づけており、施設間でも経時でも改善は見られなかったとしています。変わったときの診断が半分近く誤っていたことは、MRIを撮る閾値が大きく違う2施設で等しく当てはまったとも書いています(Einerson 2018)。1997年から2017年を3期に分けます。ここからの分母は各期のMRI施行数で、これまでの78例の内訳です。診断が変わったのは、2008年より前が17例中5例(29%)、2008〜2012年が33例中10例(30%)、2013〜2017年が28例中13例(46%)でした。一方、MRIの読影が最終診断と一致した割合は、各期の全症例に対して61〜65%の範囲にとどまり、傾向は有意ではありませんでした(P=.96)。症例数も、技術も、読影の経験も増えたのに、この2施設で正しい診断の割合は改善していない、と著者らはまとめています(Einerson 2018)。

著者らは、放射線科医が臨床的なリスク因子(複数回の帝王切開既往など)を知り、事前の超音波画像を見られたことが読影に影響したとみられる、とも書いています。この条件はMRIの精度を過大評価させ、診断が変わる見込みを過小評価させた可能性が高い、というのが著者らの述べ方です。ただし実診療でも放射線科医は、正しい診断に至る見込みを高めるために臨床情報と事前の画像を用いるのだから、その条件下でMRIの実用性を確かめるのは妥当だ、と著者らは述べています。あわせて、複数の放射線科医が臨床情報と超音波のデータに盲検化して読影する研究が、この論文の時点で進行中だとも記しています(同)。

著者らは限界として、後ろ向きの記述研究では診断精度の問いに決定的に答えられないとしたうえで、一部の選ばれた症例で小さな有益性があることは除外できない、と書いています。ただし、その「選ばれた症例」が何を指すかは示されていません。この論文が個別に検討した二つ——後壁・側方の付着と、超音波で重症PASが疑われた症例——のうち、前者では診断精度が改善する証拠は見出されず、後者について著者らは、自分たちのデータはMRIの使用を支持も否定もしない、と書いています。その2施設の中身も同じではありません。最終的にPASまたは重症PASと診断された割合は、ユタ大学が50%、コロラド大学が100%で有意に違い(P<.01)、そのため子宮摘出に至った妊婦もユタ大学のほうが少なくなっています(48%対100%、P<.01)。78例は、この二つの集団を合わせたものです。著者らはまた、この結果は癒着胎盤の紹介を多く受ける2施設のものであり、扱う症例数がより少ない施設や、自施設のMRIの診断精度をこれより高いと報告している施設には、そのまま当てはまらないかもしれない、と断っています(いずれも Einerson 2018)。

超音波と直接比べたメタ解析

超音波とMRIを直接比べたシステマティックレビュー・メタ解析があります(De Oliveira Carniello 2022)。ただしこれは、同じ妊婦に両方の検査を行って二つを横に並べたもので、超音波のあとにMRIを重ねると何が加わるかを問うたものではありません。リスク因子のある妊婦に両方の検査を行った17研究・計1,301例を統合した結果、感度も特異度も超音波とMRIで同程度で、統合感度はどちらも85%未満でした。

ただし著者らは、この所見の解釈には注意が必要だとしています。対象集団も方法も研究間のばらつきが大きく、患者選択のバイアスリスクは診断精度研究のバイアスリスク評価ツール(QUADAS-2)による評価で組み入れた全研究が高リスクでした。ただし著者らは、組み入れた研究の全体的な質そのものは妥当だとも書いています。補足資料には、17研究それぞれがどの所見を診断基準に使ったかが一覧になっています。Table S1 の本体に欄がある所見は14種類(超音波が7、MRIが7)です。研究によって使う数が違い、13所見を使った研究がある一方、5所見しか挙げていない研究があり、1研究は基準を報告していません。ただしその5所見の研究は、脚注で子宮の膨隆のほかは、MRIにも超音波と同じ所見を使ったと断っています(同・Supporting Information Table S1)。著者ら自身、自分たちの感度も特異度も過去の報告より低く出たのは、ひとつの所見だけでPASと診断していることに関係するかもしれないと書いています(De Oliveira Carniello 2022)。

超音波もMRIも統合感度が85%未満であることを踏まえて、両者を組み合わせれば診断精度が上がるのかどうかは、まだ確かめられていない、とも書いています(同)。先に引用したWallerらの「超音波と併用すれば診断精度を高めるのに有用でありうる」は、De Oliveira Carniello らが「まだ確かめられていない」と書いたことについての、総説としての見立てにあたります。

この数字がどういう集団で測られたかも、著者らが書いています。1,301例のうち457例が実際にPASで、有病率は35.13%——2019年に一般集団について推定されたPASの有病率0.17%よりはるかに高い集団です。しかも検査は、熟練者を擁する専門施設、その多くは大学施設で行われています。著者らは、この研究群で得られた超音波とMRIの検査の質は、専門性の低い施設では達成できないかもしれないと述べています(同)。著者らの結び方は「どちらが優れているか」ではありません。PASのリスクをもつ妊婦を評価するとき、どの画像検査を選ぶかは、使える機器と検者の習熟にもとづいて決めるべきだ、というものです。超音波のあとにMRIを併用するかどうかではなく、最初にどちらを撮るかについての結びです(De Oliveira Carniello 2022)。

Einersonらも回答のなかで、穿通胎盤の検出について超音波とMRIは同等だとする二つのメタ解析を、MRIのほうが感度が高いとは言えない根拠として挙げています(Einerson 2018b・著者回答)。この2本は、同じ著者グループが対で出した超音波のレビューとMRIのレビューです。MRI側は、本稿がこのあと深達度と局在のところで引用する Familiari らのレビューそのものです。

二つの検査の精度が全体として同程度だということは、両者の読みが分かれた症例でどちらが正しいかについては何も言いません。Einersonらは78例すべてを最終診断と照らしており、そのうちMRIが超音波の診断を変えた28例では、正しかったのが15例、誤っていたのが13例でした(Einerson 2018)。

深達度までは読めるか

ここまでの数字は、PASがあるかどうかと、それが重症PAS(穿通胎盤)かどうかを見つける精度でした。単純癒着胎盤・侵入胎盤・穿通胎盤という深達度の区分を、MRIが判定できるかは別の問いで、扱う研究群も違います。MRIだけを扱ったメタ解析が、摘出子宮の組織診を参照基準として、深達度の区分ごとにMRIの成績を集計しています。対象は、超音波でPASを疑われた妊婦か、臨床的リスク因子のある妊婦です(Familiari 2018)。

Familiari らの結論は二部構成です。前半は、MRIは胎盤浸潤の深達度と局在(子宮体部か、子宮下節から下か)を同定する精度に優れている。後半は、ただしその数字は主に、すでに超音波でPASを疑われた妊婦に二次的な画像としてMRIを行った研究から出ており、重症度を検出するときの実際の診断性能を表していないかもしれない。以下では、まず前半の数字を見てから、後半の但し書きが何を指しているかに戻ります(Familiari 2018)。

単純癒着胎盤と侵入胎盤がひとつの区分にまとめられているのは、同じ子宮標本に両者が併存しうること、研究によっては両者を分けて取り出せなかったことを、著者らが理由に挙げています。この区分の感度は95.0%(95%信頼区間86.0〜99.0、8研究261妊娠を統合)、穿通胎盤では86.5%(74.2〜94.4、7研究269妊娠を統合)。特異度はそれぞれ96.0%と96.8%です。侵入胎盤だけを取り出した感度は100%(75.3〜100、3研究163妊娠)、特異度は97.3%(93.3〜99.3)でした。同じ表には、深達度ごとの総合判定の尤度比も出ています。陽性尤度比は、単純癒着胎盤と侵入胎盤をまとめた区分で28.3(8.40〜95.9)、穿通胎盤で16.5(2.89〜94.1)、陰性尤度比は穿通胎盤で0.25(0.15〜0.44)です(Familiari 2018)。

ここでの感度の分母は、病理で確定した深達度です。病理でその型だった妊婦のうち、MRIの複数の所見をまとめた総合判定が「異常あり」だった割合にあたります。著者らは深達度ごとに、この総合判定が陽性か陰性かを見ており、同じ総合判定が単純癒着胎盤にも侵入胎盤にも適用されています(Familiari 2018)。

著者らは深達度を四つに分けた推定も出しています。単純癒着胎盤、侵入胎盤、その二つを合算した区分、穿通胎盤です。そのうち単純癒着胎盤だけを取り出すと感度は94.4%、信頼区間は15.8〜99.9で、この幅からは読み取れるものがありません。著者らは、癒着・侵入をまとめた区分にくらべて穿通胎盤の感度が低いことを、説明を要する所見として扱っています。ただしこの2つは別々のメタ解析で(8研究261妊娠と7研究269妊娠)、総合判定の中身も違います。穿通胎盤の側だけ、隣接臓器への直接浸潤・限局性の外方突出腫瘤を加えた判定を使っています。信頼区間も重なります(Familiari 2018)。

穿通胎盤で感度が下がる理由として著者らは、穿通胎盤が漿膜どまりから子宮傍組織・膀胱への広範な浸潤までを含む一括りの呼び名であり、どこまで達しているかによってMRIの所見の出方も同じとは限らないことを挙げています。深達度を判定する精度そのものは超音波と同程度だとされていますが、これは同じ著者らが以前に報告した超音波のレビューと並べた比較で、同一症例で両方を実施して比べたものではありません。MRIの読影が穿通胎盤だったとき、それが漿膜どまりなのか膀胱まで及んでいるのかは、区分ごとの感度からは分かりません(Familiari 2018)。

なお著者らは、穿通胎盤で超音波とMRIの成績が近くなる理由として、検査の受け方の違いも挙げています(Familiari 2018)。超音波の研究は、前置胎盤や帝王切開既往といったリスクをもつ妊婦を経時的に繰り返し評価しているのに対し、MRIは妊娠中に1回しか行われないのが通常である、というものです。この状況では、妊娠を通じて繰り返し評価することが超音波の診断精度を上げているかもしれない、というのは臨床的に理にかなう、と著者らは書いています。進んだ浸潤の所見は妊娠後期になって初めて現れることもあることも併せて、それが両者の成績が近いことを部分的に説明しうる、というのがその見方です(同)。

ここまでの感度・特異度は、MRIの所見をまとめた総合判定の値です。所見をひとつずつ見ると、穿通胎盤に対して感度が最も高いのは胎盤内T2低信号帯(intra-placental dark bands)で、82.6%(95%信頼区間68.6〜91.1)。ただし特異度は58.5%(38.3〜76.2)、陽性尤度比は1.98(1.23〜3.22)、陰性尤度比は0.30(0.15〜0.59)です。穿通胎盤を疑う根拠としては弱く、むしろ見られないときのほうが、穿通胎盤は考えにくくなります。子宮の膨隆、不均一な信号、筋層の局所的な途絶、異常な胎盤内血管も、陽性尤度比は2前後にとどまります。膀胱のテンティングはこれらより高く、陽性尤度比は4.17(1.56〜11.2)です。ただし感度は52.6%(28.9〜75.6)、陰性尤度比は0.56(0.35〜0.92)で、無いことは否定になりません。統合された研究も少なく、信頼区間が広く出ています(いずれも Familiari 2018、穿通胎盤を判定するときの値)。

数字だけなら最も高いのは、隣接臓器への直接浸潤・限局性の外方突出腫瘤で、陽性尤度比は64.3です。著者らはこの所見を穿通胎盤と独立に関連するとしていますが、統合されたのは5研究で、信頼区間は1.01〜4080です(いずれも Familiari 2018、穿通胎盤を判定するときの値)。この幅では、点推定を単独で読むことはできません。しかも、限局性の外方突出腫瘤について著者らが与えている定義は、胎盤組織が子宮漿膜を破って外へ及んでいるのが見えることです。見えた時点で穿通胎盤とほぼ言い換えになる所見です。まとめられたこの1項目としての感度は69.2%(41.8〜87.5)にとどまり、陰性尤度比は0.31(0.14〜0.68)です(同)。

ここまでの数字が、どれくらいPASの多い集団で測られたものかは、著者らが書いています。レビュー全体の1,080妊娠は、主として超音波でPASが疑われたためにMRIを受けた妊婦で、実際にPASだったのは810例(75%)でした。ただしこの1,080は組み入れた研究すべての合計で、ここまでの感度・特異度は、そのうちの一部の研究から出た値です。この節のはじめに、著者らの但し書きを引用しました。重症度を検出するときの実際の診断性能を表していないかもしれない、というものです。それが指しているのは、この偏りです。手術時の重症度と局在の評価が、組み入れ症例の大多数で読影レポートに対して盲検化されていなかったことも、Familiari らは限界に挙げています。MRIの診断精度は読影者の経験に有意に左右されることが示されていること、PASを疑わせる画像所見の呼び方にまだ完全な合意がなく、同じ所見が読影者によって別の名で呼ばれることも十分ありうることも、同じ限界の並びにあります(いずれも Familiari 2018。読影者の経験については同論文が引用)。

一方で、組み入れた研究そのものの質は低くありません(Familiari 2018)。QUADAS-2 による評価で、組み入れた研究の多くは質が高いものでした。バイアスのリスクも、当てはまりについての懸念も低い、というのが著者らの評価です。そのうえで、これらの限界はあるものの、本レビューは浸潤の重症度に対するMRIの診断精度についての最も包括的な評価である、としています(同)。全体の質を妥当とする点では、先の De Oliveira Carniello らも同じです。De Oliveira Carniello らが高リスクとしているのは患者選択の領域で、17研究の全部がそれに当たります(De Oliveira Carniello 2022)。

結論の前半——深達度と局在を同定する精度——のうち、局在の側の数字も出ています。ここで使われているのは、Palacios-Jaraquemada らが提唱した局在の分類で、子宮体部をS1、子宮下節から下をS2とするものです(Familiari 2018 が引用)。この分け方が意味を持つのは手術の転帰を予測できるからで、S2の浸潤を示す妊婦のほうが術中の合併症のリスクが高い、と著者らは書いています。ただしこの分類自体、大規模な前向き研究による検証をまだ要する、とも断っています。MRIは、手術で確認されたS1浸潤の100%とS2浸潤の100%を正しく同定していました(S1は95%信頼区間97.5〜100、S2は98.5〜100)。ただし局在を調べた研究は3本しかありません。著者らは、MRIのほうが局在を正しく描出できるように見えるかもしれないと前置きしています。比較の相手は、同じ著者らが以前に報告した超音波のレビューで、そちらの超音波の検出率はS1浸潤が93.4%(95%信頼区間64.7〜100)、S2浸潤が90.3%(80.7〜97.4)でした。著者らはこの結果を、慎重に解釈されるべきだとしています。組み入れ症例が少なく特異度のデータが無いことは、MRIと超音波が局在をどれだけ正しく同定できるかを比べる大規模な研究が要ることを示している、というのがその続きです。そもそもこのS1・S2という分け方は、前壁の浸潤を主な対象にした分類です(Familiari 2018)。

同じ部位について、Jauniauxらは別の数字を挙げています。上節または子宮体部のPASと判明した患者のうち、出生前に同定されていたのは3%だった、というものです。前置胎盤を伴わないPASが出生前に同定されることは、まれである、とも書いています(Jauniaux 2025)。Familiariらの100%は、手術でS1・S2の浸潤が確認された症例のうち、MRIが正しく同定できた割合で、母集団が違います。

そのうえで Familiari らは、さらなる証拠が出るまでは、重症のPASが疑われる妊婦に、浸潤の局在を描出するためにMRIを行うのは妥当かもしれない。とくに子宮摘出のような切除を伴う手技を予定しているときは、と書いています(Familiari 2018)。著者らの提案であって、本稿の推奨ではありません。

「後壁・側方の付着で変わるか」で引用したACOGの委員会見解は、後壁の癒着胎盤が疑われる場合に加え、超音波で判断がつかない場合にもMRIを考慮しうるとしています。後者については、Einersonらのデータがあります。臨床管理を変えうる診断の変更28件の内訳のうち、「判断がつかなかった症例をMRIがPASと判定した」ものは2件でした。ただし、判断がつかなかった症例が全体で何例あったのかは、この論文に示されていません(Einerson 2018)。

見つけられるか、重ねると何が変わるか、深達度と局在をどこまで言えるか——この3つを問うた研究の数字は、ここまでです。次回は、問いの立て方そのものを変えた研究と、読影の標準化、そして産科ガイドライン2026 CQ307 との照合を扱います。

***

付録:本文で用いた略語

  • PAS — placenta accreta spectrum(癒着胎盤スペクトラム)

  • MRI — magnetic resonance imaging(磁気共鳴画像)

  • ACOG — American College of Obstetricians and Gynecologists(米国産科婦人科学会)

  • T2強調画像 — MRI の撮像法のひとつ(T2-weighted image)。本稿では胎盤内T2低信号帯(intra-placental dark bands)の描出に用いられる

  • QUADAS-2 — Quality Assessment of Diagnostic Accuracy Studies-2(診断精度研究のバイアスリスクを、患者選択・index test・参照基準・症例の流れと時期の4領域で評価するツール)

参考文献

本文中の(著者 年)は下記に対応します。同一著者・同一年の文献の記号は、連載を通して同じ文献が同じ記号を指すよう付しています。Einerson 2018 が原著、2018b が Matsubara らの反論に対する著者回答、2019 が Rottenstreich らの指摘に対する著者回答(症例数の訂正)です。

  • Jauniaux E, et al. Placenta accreta spectrum. Nat Rev Dis Primers 2025;11:40. PMID 40473652 —(Jauniaux 2025)

  • Waller J, et al. Advances in Imaging for Placenta Accreta Spectrum Disorder. Obstet Gynecol 2025;145:621-627. PMID 40209238 —(Waller 2025)

  • Einerson BD, et al. Magnetic resonance imaging is often misleading when used as an adjunct to ultrasound in the management of placenta accreta spectrum disorders. Am J Obstet Gynecol 2018;218:618.e1-618.e7. PMID 29572089 —(Einerson 2018)

  • Matsubara S, Takahashi H, Takei Y. Magnetic resonance imaging for diagnosis of placenta accreta spectrum disorders: still useful for real-world practice. Am J Obstet Gynecol 2018;219:312-313. PMID 29752929 —(Matsubara 2018)

  • Einerson BD, Silver RM, Rodriguez CE. Reply. Am J Obstet Gynecol 2018;219:313-314. PMID 29752926 —(Einerson 2018b)

  • Rottenstreich A, Levin G, Zigron R. Magnetic resonance imaging management of placenta accrete spectrum. Am J Obstet Gynecol 2019;220:127. PMID 30419197 —(Rottenstreich 2019)

  • Einerson BD, Silver RM, Rodriguez CE. Reply. Am J Obstet Gynecol 2019;220:127. PMID 30419201 —(Einerson 2019)

  • Lim G, Lim M, Horowitz JM. Magnetic resonance imaging for placenta accreta: hope for the future. Am J Obstet Gynecol 2019;221:536-537. PMID 31351064 —(Lim 2019)

  • De Oliveira Carniello M, et al. Diagnosis of placenta accreta spectrum in high-risk women using ultrasonography or magnetic resonance imaging: systematic review and meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol 2022;59:428-436. PMID 35041250 —(De Oliveira Carniello 2022)

  • Familiari A, et al. Diagnostic accuracy of magnetic resonance imaging in detecting the severity of abnormal invasive placenta: a systematic review and meta-analysis. Acta Obstet Gynecol Scand 2018;97:507-520. PMID 29136274 —(Familiari 2018)

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